Overview
Gene Network Gameは、与えられたプロモータ、遺伝子を組み合わせて目的の挙動を示す遺伝子回路を構成するパズルゲームである。このゲームを通してプレイヤーは遺伝子回路の性質を学ぶことができ、それは他チームのコンストラクトを理解したり、自チームのコンストラクトを設計する際に役に立つ。また、モデリングの入門教材としても使用出来る。
プレイヤーは、まずいくつかのプロモータと遺伝子、シグナル入力と、目的とするタンパク質濃度の時間変化が与えられる(左)
プロモータと遺伝子を適切に並べて、目的の時間変化を再現できたらクリアである(右)
ゲームは複数のステージに分かれており、順番にプレイしていくことで、プロモータや遺伝子とは何かといったところから、オシレータやトグルスイッチといった代表的な遺伝子回路までを学ぶことができる。
さらに、ステージエディタ機能があり、こちらでは自分で転写速度や分解速度といったパラメータを決めてステージを作ることができる。これは自作のステージで遊ぶ以外にも、簡単なモデリングツールとしても使うことができる。これによって、Matlabのような専門的なソフトウェアでモデリングするにあたっての予備知識をつけることができる。
Background
コンストラクトはiGEMプロジェクトの最も重要な部分である。
iGEMerは他チームのコンストラクトを理解し、自チームのプロジェクトの目的を達成するコンストラクトを設計しなければならない。そのためには、遺伝子回路の原理を理解する必要がある。
さらに、設計した遺伝子回路の応答を予測するためには、そのダイナミクスをモデル化して計算しなければならない。そのためには、モデル化の考え方を理解する必要がある。
これらの点において、現状では次のような障壁があると考える。
問題点①
遺伝子回路のダイナミクスを学ぶにはシステム生物学の教科書を開けば良いのだが、それを理解するためには、微分方程式を用いた生化学反応のモデル化をきちんと理解しなければならなかった。これは多くのiGEM入門者にとっては敷居が高いものである。問題点②
iGEMでよく説明に用いられる図式で表されているコンストラクトは直感的でわかりやすいが、定量的な時間変化までを読み取ることは難しい。つまり、「反応にどれくらいの時間がかかるのか」といった情報はわからない。問題点③
iGEMではプロジェクトで用いた遺伝子回路の性質をシミュレーションして調べることが多いが、現状のモデリングツールの使用にはある程度の数理生物学、情報科学の知識が必要である。そのため、多くのチームではモデリングを行うために専門知識を持ったメンバーを必要とし、その他のメンバーはモデリング担当が何をやってるのかよく分かっていないという状況がある。これらの障壁を取り除くものとして、Gene Network Gameは作られている。
Method
システム的なこと
processingで書かれている。ステージのデータはファイルで入出力できる。
GUIはcontrolP5というライブラリを用いている。
シミュレーションの原理
転写因子による制御はHill式を用いている。時間発展は4次のルンゲクッタ法で解いている。
Result
初心者(数学、生物の知識を持たない者)でも- コンストラクトを読んでダイナミクスを理解できるようになる →過去プロジェクトの理解が進む。
- コンストラクト設計の訓練ができる →自プロジェクトの検討を効率的に進められるようになる。
- モデリングの敷居を下げる →チーム全体でモデリングに参加できるようになる。
Future
- ステージエディタの機能拡充 webベースでステージを登録し、共有できるようにしたい。
- 現実のプロジェクトのステージ化 過去プロジェクトをステージ化することで教材としたい。
- 簡易モデリングツールとしての高度化 現実のプロモータ、遺伝子のパラメータをデータベース化して登録すると便利そう。